私は鍵を開けると、頑丈な黒塗りの扉を押し開けた。室内から溢れてきた鉄や木の匂いに家に帰ってきたという安堵感を覚える。私は路銀のないラビスを連れて自宅に戻ってきていた。
レヴィンはいい顔をしなかったが、私の決めたことだ。それ以上のことは何も言ってこなかった。まぁ、私だってタダでラビスを泊める気はない。
家に泊める報酬に『持ち曲』を教えてもらう条件だ。ラビスの奏でる曲は聞いた事のないものばかりで、いたく興味をそそられたのだった。
ちなみに、レヴィンと採集隊《カーヴァンクル》はいない。オラヴィの街の入り口ですでに分かれている。
レヴィンは《カーヴァンクル》の採集したアスピアを持って商人の家まで出かけていった。適当な商人と契約して頼まれた種類のアスピアを回収してくるのがレヴィンたちの仕事なのだ。
今日はアスピアの、『オーボエの樹』の幼木と『ホルンの樹』の実を納品するように頼まれていたはずだった。
私のすぐ後ろでずいぶんと間延びした声が聞こえてきた。
「フィレスって立派な家に住んでるんだねぇ。お金持ちなの?」
その言葉を聞いて、この街のオラヴィ市街の街並みを見たときにラビスがどんな感想を述べるのか聞きたくて堪らなくなった。
笑い出そうとする唇を噛んで私は言ってやる。
「フフッ、このあたりじゃこの家は立派なもんだけど……大したもんじゃないわ」
この建物はオラヴィの旧市街の中でもっとも劣化の進んだ倉庫だ。だが、レンガ造りの漆喰で固められた建築物は立派な建物といえる。今は旧市街寄りのスラムを形成する一角となっているものの、まだ商業都市オラヴィが発展していなかった頃に建造されたものだから基礎がしっかりしている。
旧市街と隣接するスラム街には、くず石材や廃材を利用して造られたぼろ小屋が乱立している。ややスラム街に位置するものの、旧市街の外れにあるこの家は上等なほうだ。
「でも、ラビス。ここ以外の街を見たことないの? さっきから目に映るものすべてが珍しいって顔してるわよ」
採集隊《カーヴァンクル》と分かれた私たちは、ラビスを連れてオラヴィの旧市街を少しだけ散歩をした。
オラヴィ市街と港から続く大通りの商店には市民証がないとは入れないので足を運んでいないが、古くから沿岸の街としてあった旧市街には古風な街並みが残っている。旧市街には立ち入りの制限がないためラビスに案内していたのだ。
煉瓦造りの家々や赤茶けた屋根の続く街の雰囲気にラビスは子供のようにはしゃいでいたのを思い出す。
「エヘヘ、ずっと森の中にある村で暮らしていたから……。本当は村から出るのも初めてなんだ」
「へぇ……」
なんで村から出てきたのか、とは聞かなかった。
難民のように不遇に見舞われたと考えるのは早計というものだが、どことなくラビスの瞳に寂しい影が過ぎったのに気がついていた。
背負っていた『フルートの樹』の幼木を長机に乱暴にのせる。ついでに先程市場で買ってきた梨を転がした。
割りと広めの室内を半分ばかり占拠する木製の長机。薄暗い部屋の奥には金属を溶かす炉や鉄を打つハンマー、鉄を掴む金属の鋏。それに使い余した楽器素材が散らばっている。
喉の渇きを潤すため梨を一つ手にとって噛り付く。
私はのんびりと椅子に座って足を伸ばす。ラビスは、様々な楽器や道具で溢れかえる室内を忙しくなく歩き回っている。彼女が動くたびに多種多様な音が騒ぐので、二人しかいないというのに賑やかだ。
私は和みながらその光景を眺めていた。そこで、窓から注いでいた日差しが何かに遮られた。私は首だけで窓の外を見やり、小さく舌打ちを漏らす。
空を隠すのは巨大な船。
『フルートの樹』の巨木を使った櫂をいくつもぶら下げた細長い胴。ここからだと見えないが、所有者によって帆に掲げる美麗な旗がひるがえっているに違いない。空を翔る船、『翔帆船』と呼ばれるものだ。
ただの『翔帆船』ならば私は嫌な顔をしない。あれが、武装した軍船だから気に入らないのだ。このオラヴィの街に戦争が近づいてくるのを予感させるから……
オラヴィはいま大国との戦争に備えて軍備を整えているのだ。港には武装船団が停泊し、あらくれの傭兵が闊歩している。
ご機嫌なラビスを見やる。
勢いで誘ったもののラビスを戦争に巻き込む気はない。なるべく早くにこの街を立ち去るように言うべきなんだろう。
「ラビスは、いつまでここに滞在するつもりなの?」
ラビスは傾いた棚においてあったヴァイオリンを手にとってしげしげと眺めている。彼女は部屋中の楽器を見渡してから口を開いた。
「う~ん、別にいつまでってことはないけど。どうして?」
つぶらな瞳が私の言葉を待っている。その瞳の輝きを見つめているうちに、喉につっかえがはまったように言葉が作れなくなってしまう。
「ん、ん。え……と。いや、なんでもないわ」
私はラビスから顔を逸らす。
いま言う事もないか、言う機会はいつでもあるんだし。私はそんな理屈を頭の中で並べ立てていた。
視界の端で、ラビスはキョトンとした表情で首を傾いでいた。苦し紛れに外へ視線を移した。翔帆船はすでに港の方へ行ってしまったようだ。
ラビスは『トランペットの樹』の花、『トロンボーンの樹』の蕾、『チューバの樹』の花、と、楽器の植物であるアスピアを手に取る。その中でも、ヴァイオリンや鉄琴、特殊な金属で造りられたフルートなど、加工して作り出された楽器には並々ならぬ関心を示している。
ラビスは、自然に生えるアスピアしか見たことがないのだろうか。
森に生えるアスピアは、売れっ子の楽士たちの間で主流の楽器ではなくなっている。旅をする吟遊詩人たちも、珍重な木材や稀少鉱石で造られた楽器を持ち歩く。ラビスの服もそういった『類』のものだと思ったのだけどね。
そんな私の考えなど知らず、ラビスは私の前に立って訊ねてきた。
「フィレスは楽器を作る職人さんなの?」
半分合っているけど、半分違う。この部屋の装いを見れば誰だってそう思うんだろう。
「まぁ、売り物は作らないけど……自分用と友達にあげるくらいなら造るよ。このピアノとかね」
私は腕を構えると短いフレーズを繰り返す。指先を踊らせると、仕込まれたハンマーが湾曲したガントレットの内側を叩き、涼やかな音を反響させた。
楽器造りは父から基礎だけは教わっていた。それを自分なりに応用して、勉強して技術を磨いた。このピアノも、『音色も音階も変わらずに持ち運べたら』って発想から造ったものだ。
ちなみに。
ピアノやヴァイオリンなど幾つかの楽器は、自然には生えていない人間の発明した楽器である。
これらは近年になって発見された《ソウル・アスピア》と呼ばれる特殊な鉱石・木材を用いて作られる。稀少で金貨百枚は下らない高価な素材だが、昔はレヴィンに採取してもらっていた。
また、楽器を作るからには演奏もできなければいけなかった。そんな理由で、母は私にあらゆる楽器の扱い方と勉学を教えた。だから私はスラム民でありながら教養のある人間として誰かにものを教えることができる。
いまの私、『フィレス』があるのは、まさしく二人のおかげだ。私が十になる前に二人とも死んでしまった事だけは恨んでいるが、本当に感謝している。
あぁ、そう言えば。
私はラビスのフリルを眺めていて、はたと思い出した。
「その服さ、ちょっと見せてよ。あれだけたくさんの音色を出すんだから特殊な繊維とかで作っているんでしょ?」
椅子から立ち上がり、滑るようにラビスの正面に移動する。彼女が不穏な空気を察して後ろに下がろうとするときには、私の両手がガッチリと襟を掴んでいた。
「えッ……ぇ……?」
ラビスの菫色の瞳に不安そうな色が宿り、戸惑いの表情を浮かべていた。そうしている間にも、私の指は上着の細い紐を素早く解いていた。
「ちょっと脱ぎなさい。すぐ終わるから」
ハッキリと耳元で告げられたラビスはようやく抵抗を始める。
「ちょ、ちょ、ま、ッ待った。ダメだよ!」
「大丈夫よ、ちょっと調べるだけだから。破かないし、バラシたりしないし。ちょっぴり着たり……はするかも。でも大丈夫」
子供をあやす様に説明してやるが、ラビスは猛然と抗議をしてくる。
「ダメーーーーッ! 大丈夫じゃないよッ! ダメ、絶対ダメ!」
悲痛な叫びは無視しておく。
襟紐を完全に解き放し細腕をゆっくりと引っ張る。暴れる腕から袖を抜きとった。女の私からでも唸るような真っ白い肌が露になる。ラビスの肌はサラサラとしていて弾力がある。その割にしっかりとした筋肉がついていた。
「別にそんなに嫌がらなくてもいいじゃん。女同士なんだしさ」
怪しげな台詞を吐きつつ、チャッチャと上半身を脱がせにかかる。
「――?」
妙な気分を感じる。
柔らかい肌と吸い付くような手触りには違いない。だが、同時に女としての感覚が何かの違和感を突きつけていた。違和感ははだけた胸元を見て知ることができた。
ただ、理解できなかった。
指が触れたのは、肉と肋骨の骨の硬さ。本来有るべきふっくらとした膨らみがない。思考のないままほっそりとした胸板を注視してしまう。
そして。
「んな……ッ!」
私は激しく後ずさり、戸棚に後頭部を激突させた。ついでに降り注いできた楽器に頭を殴られる。痛みに顔をしかめながら私は叫んだ。
「あんた男なの!?」
「そうだよ……ッ!」
ラビスは両腕を交叉させて小さく声を発した。
急激に顔が火照ってくる。頭では怒り心頭に発する、としたいところだ。でも、生理的にはまったく別の意味で熱くなっていた。
「最初に名乗ったじゃないか。『ラビス』は男の名前だよ」
ラビスは恥ずかしそうに身をすぼめて服を着ている。
厚手の体の線を隠す服を着ているから全然わからなかった。声だって男のものとは思えないくらい綺麗なのだから。
「だ、だからって……そんな服着てたら誰だって女だと思うわよ!」
気恥ずかしさを憤りの演技で誤魔化して、ついでに体をあさっての方向へ向ける。
男のクセに頬を赤らめるな。赤くなりたいのはこっちの方だというのにッ!
手に残るラビスの感触を思い出して頭を掻き毟りそうになる。得体の知れないもどかしさに身悶えしていると、扉を叩く音が聞こえた。
「フィレス? 帰ってないのか? 子供たちが待ってるぞ!」
続いて聞こえてきたレヴィンの声。私には誰かがすぐに分かったので、「開いてるわよ」と声を返してやった。声が震えてしまったせいで要らぬ心配を与えてしまったかもしれない。
扉を開けて入ってきたのは、レヴィンだ。商人のところから帰ってきたらしい。ずいぶんとおそい帰りだ。
レヴィンは私の顔を見て眉をひそめる。それから背中を向けて着衣の乱れを直すラビスへ視線を移す。
途端、レヴィンの肩がブルブルと揺れだした。そのままグルリとこちらへ振り向く。
「お、前……馬鹿野郎ッ。俺はッ、お前がッ、そんな事をするやつだとは思わなかったぞ!」
レヴィンは声を荒げて掴みかかってくる。私の肩を押さえつける力から察すると、本当に怒っているらしい。
何を勘違いしているんだ、この男は。
私とて負けてはいない。レヴィンの腕を払いのけると、唾を飛ばす勢いで言い返す。
「勝手に変な事を想像しないでちょうだいッ、この変態ッ」
「どっちが変態だッッ!」
私たちの怒声は部屋一杯に広がって窓枠を震わせた。一方、当事者のラビスはすっかり元に戻っている。服を着なおしたラビスは曖昧な表情でレヴィンの肩を叩く。
「なにをそんなに怒っているの?」
ラビスのまったく動じていない様子に、レヴィンの方はうろたえてしまう。私を捨ててラビスに言葉を濁しながら訊ねる。
「何を……って、お前。フィレスに何か、その、されたんじゃないのか?」
ラビスはおっとりとした動きで首を左右に振る。
「フィレスは僕の服の構造を調べようとしただけだよ。ちょっと強引だったけど」
「なんだとぉ……」
レヴィンは極まり悪そうに頬を掻く。戸惑いを含めた視線が私を見下ろしている。ようやく、自分が何かの勘違いをしているコトに気がついたようだった。
「……そうなのか?」
「ええ、そうなのよ」
怒りを静かに燃え上がらせながら、私は大きく頷いた。淡々とした調子で切り返した。
「そりゃぁ……悪い。俺が悪かった、謝る」
背中を丸めて謝罪するレヴィンに対して、私は鼻を鳴らしてプイッとそっぽを向いてやる。
この仕草は『貸しにしておく』という無言の意思表示だ。何か力仕事の時には今日の事を引っ張り出して手伝わせることにしよう。
レヴィンは意味を理解しているため、心なしか表情にヒビが入る。
「で、何の用なの?」
不毛な言い争いを終えて、私はぶすっとした口調で切り出す。レヴィンは大仰な手振りで驚いて見せた後、忘れたのかと、口を開く。
「おいおい、子供たちが皆で待ってるんだぞ……って。コラッ、入るな!」
開け放したままの扉からひょっこりと小さな頭が割り込んできた。
大人用の服を着て、ボロボロのズボンを引き摺った少年。その影に色褪せたワンピースを着た少女が姿を見せた。
そして、あとからあとから押されるようにして小さな体が室内になだれ込んできた。たちまち室内は子供たちの甲高い声で満たされていく。
「あ、そっか!」
私はポンと手を打つ。
ようやくレヴィンに言われた事と子供たちが押し寄せてきた理由を完全に思い出していた。
「ああ、そっか。ゴメン。思いだした」
私は手の空いた時間とスラムの子供たちの暇な時間が重なる時にだけ、音楽と文字の勉強をしてあげているのだ。ここ最近はずっとご無沙汰だったので約束を忘れていた。
子供たちの何人かは手にアスピアを持っていた。
それはフルートであり、クラリネットであり、古びたヴァイオリンであった。それらはすべて私が彼らに与えた物だ。
子供たちの中にはアスピアを持たない子もいた。その子達は頼んでいた楽器をせがんで纏わりついてくる。
「はいはい、ちゃんと採ってきたから。慌てないで」
口々に私の名を呼んで集まってくる子供たちを宥めつつ、机の上に置きっぱなしの『フルートの樹』の幼木を取りにいく。ヴァイオリンの方は幾つか修理しておいたものを棚から下ろす。
楽器を受け取った子供たちは歓声を上げ、思い出したように私に礼を述べる。元気があって実によろしい。私は一人ずつ頭を撫でてやる。
楽器が全員の子供たちに行き渡った事を見て気分が良かった。しかし、私は残ってしまった楽器をそっと戸棚に戻す時、なんともやりきれない気持ちになる。
スラムの子供たちは孤児が多い。
彼らの親が楽器工房で働いているのであれば、まだ幸せなほうだ。しかし、それはほんの一部。ほとんどの人は採集隊を組み、楽器の素材を集めに森や山へ出掛け……二度と帰ってこない。
子供たちだって例外ではない。自分たちで素材の採集隊を組んで森や山へ入る。親がいなければ自分たちで生きていかなければならないのだから。
楽器素材の採集隊に参加して帰らない者となるか。楽器工房の下働きで体が老いて動かなくなるまで働くか。盗みに手を染める子供も少なくない。捕まって腕を切り落とされた子供もいる。
私がどのように感情を表してみたところで解決しない事は知っている。
だから、私は涙も流さない。苛立ちに拳を叩きつけもしない。ただ、子供たちに楽器を与えて音楽を教える。それが子供たちに救う事だと信じて。
「フィレス姉ちゃん、はやくッ」
私の手を掴む温かな指先。触れた小さな掌に我に返る。
「あ……アハハ、ゴメンゴメン。引っ張らないで」
私が呆けていたものだから、子供たちは腕を持っていつもの音楽教室へ引っ張っていこうとする。しかし、一部の子供たちが見知らぬ人に対する好奇の視線を寄せている事に気がつく。
忘れてた。そろそろ紹介しておかないと。
私はやんちゃな子供の手を優しく解いてラビスをグイッと引き寄せる。子供たちの活発な姿に目を瞬かせていたラビスは大人しく従った。私は大仰な振る舞いで両腕をラビスの横に差し出した。
「皆に紹介しましょう。吟遊詩人のラビスお姉ちゃんだよ、仲良くしてあげてね」
色々と語弊のある紹介にラビスが不満の声を上げようとする。しかし、子供たちは見知らぬ人物の素性に歓声と感嘆の声で応じたので掻き消されてしまった。
……細かく説明すると話がややこしくなる。それに目に見えるものがすべての子供たちには理解できないだろう。これがいい選択だ。
子供たちの関心を一挙に引き受けてラビスはオロオロとたたらを踏んでいた。ラビスを先導するように子供たちは戸外へ歩き出す。
黄色い声が扉の向こうへ消えてから、レヴィンへ話しかけた。
「今日は音楽に付き合うくらいの暇はあるんでしょ? 仕事の前に寄ってけば?」
子供たちとラビスが出て行った扉を指差す。レヴィンは昼夜を問わず仕事に駆けずり回っている。日が出ている時間に彼と出会うのは数週間ぶりだ。たまにはゆっくりと会話の時間を持ちたい。
「そうしよう。久しぶりに親友と過ごす時間を大切にしておく」
私の気持ちが通じたのか。レヴィンは口元だけで笑みを作った。
それに気になることがあった。
子供たちの中に《カーヴァンクル》の子が一人もいなかったのだ。レヴィンも含めて、《カーヴァンクル》の子供たちは私の開く音楽教室を休む事はない。彼らは楽器を巧みに扱えることが自分の命を長くつなぐ事に繋がると信じているからだ。
それにレヴィンが遅くなった理由と関係があるかもしれない。
「……レヴィン?」
街の喧騒を遠くに私は静かにレヴィンに訊ねた。彼は少々決まり悪そうに頬を掻き、小さく舌打ちを漏らす。
間を置いて、レヴィンはおもむろに口を開いた。
「《カーヴァンクル》を解散させる……、明日からは全員別行動だ」
「な、んで……ッ」
突然の事に私は二の句を告げずにいた。何故かと言えば、《カーヴァンクル》の解散よりもレヴィンの様子が私の胸を締め付けていたからだ。悔しそうに唇を噛み、静かな怒りを滾らせた青い瞳。
この顔を見るのは、実に十年ぶりくらいだろうか。レヴィンの両親が採集隊に参加して帰ってこなかったあの日以来のことだった。